感想戦がよかった渡辺竜王と島朗九段のNHK杯

tamafish

2010年12月20日 19:13

12月19日のNHK杯将棋トーナメントは竜王位を防衛したばかりの渡辺竜王(収録はタイトル戦の真っ最中?)と島朗九段という居飛車本格派の好取組みとなりました。大方の予想通り、戦型はスラスラと相矢倉になりましたが、「これぞ矢倉!」というスピード感あふれる攻め合いとなりました。

終盤(上の図の局面)で渡辺九段が放った▲4四角が、次の一で作ったような手でした。△同金は3三の地点の駒の利きが一枚減りますので即詰みです。その後も桂馬の利きにタダで桂馬を捨てる手も登場し、後手玉をピッタリと詰ました渡辺竜王の勝ち。

内容もさることながら、感心したのは感想戦(対局終了後に、あそこが悪手だった、こうすれば良かったなどをお互いに話し合う反省会みたいなもの)の島九段の態度です。NHK杯の将棋はほとんど見てますが、なかには負けてガックリきてるのか、感想戦でほとんど喋らない棋士、投げやりな手つきで指す棋士、研究内容を明かしたくないのか、「ええ」とか「まぁ」とか適当に相槌を打つだけの棋士…など、その態度は様々です。

しかし、木村八段や森下九段、そして今回の島九段のように、例え敗戦であっても、視聴者のために気持ちよく、そしてわかりやすく感想戦を行ってくれるプロ棋士もいます。タイトルは保持していなくても、自分の中ではファンを大切に思っている彼らこそ本当の一流棋士です。解説を務めた屋敷九段のハキハキした語り口もよかったですね。

対局後に両対局者がお葬式に参列しているような感想戦もたまにありますが、ああいうのを繰り返していると、対局後の時間はカットということになり、NHK将棋トーナメントの時間枠そのものが短縮されないとも限りません。来週は一手に5時間超もの考慮時間を使ったこともある堀口(一)七段と怖いもの知らずの新鋭・糸谷五段の一戦です。